HONDA DOMANI

 Coupe 7、初代軽Z、初代 Accord、一世を風靡したかわいい出で立ちのCITY、リトラクタブル・ヘッドランプのアコード姉妹車VIGOR、他社電子制御システムと一線を画したメカ伝達方式4輪操舵4WSの4代目アコード、ほぼ30年落ちまで乗り続けた元祖ミニバンたる初代プレーリーとそれぞれに個性豊かで思い出は語り尽くせない中、イギリスROVER提携の申し子たる HONDA DOMANI SI-G が千葉からやって来た。そもそも、シビック系共通シャーシのCピラーが立っていると云う事で新車発表会時に後席の座り具合を確認したりしていたが、まさかそれから10年後に所有するとは夢にも思ってもいなかった。

 ブリティッシュの血が入っているだけの事はあった。正統派セダンとしての志を強く感じさせられたものである。なによりもシートが体にしっくりと合ったと感じた初めての車だった。それまで長距離ドライブ嫌いだったものが、娘の首都圏方面大学進学と云う事もあったにせよ、せっせと東北の地から出向いても乗り疲れをしないのである。

 重めのハンドリングとどっしりとした大型セダンを思わせるサスペンションセッティング、ストレス無く回るエンジンで、抜群の高速安定性が更に走りをそそる。一回りコンパクト、かつ、四隅が切り落とされたデザインもあり、狭い道や駐車場での取り回しにも気疲れしなかった。カミさんとの共用の為のパワーシートリフターもチャッカリ完備。更に使い勝手でとても重宝したのは、リアトランクリモコンオープナー。スーパー買いだし両手荷物いっぱいが日常茶飯事なのだが、トランクだけノータッチでプシュッとリモコンで開ける事が出来た。SI-GグレードはLEDストップランプが埋め込まれたリアウィング付きで、用無しとなったリアシェルフ上のセンターストップランプへはダミーでDOMANIマークがはめ込まれ、夜間ランプ点灯時にはこのDOMANI文字がグリーンに輝くという懲り様。バブル時代のBMWセダンのインパネを彷彿とさせるセンター上面エアー吹き出しデザイン、提携先のROVERからは400シリーズとして販売されていた。

HONDA DOMANI SI-G

 その後、エンジン下部がオイルまみれでいかんともしがたい状態となり、新しめの同グレードDOMANIが手に入るならとも考えたがSI-Gの販売台数が少なかった事もあり叶わず、DOMANIの経験から次期所有車としてイギリス車のコンセプトも捨てたものでは無いと物色。カミさんとの共用なのでパワーシートリフター必須条件で、中古価格が値崩れしている ROVER 75 を候補として整備環境を調べたが、よく壊れるとか部品が手に入りにくい等の情報が多く、貴族的伝統を感じさせる正統派ブリティッシュスタイルに未練を感じつつも断念。

ROVER 75

 さてさて他のイギリス車はと探していたところ、イギリス逆輸入TOYOTA車が軽自動車価格程度の手に届きそうな中古価格帯で出回っている事に気づいた次第。二代目 AVENSIS である。早速いつもお世話になっている整備工場さん経由でこれまでの最遠、福岡からやって来た。前オーナーが丁寧に使っていた名残が随所に残っていて微笑ましい。

TOYOTA AVENSIS

 乗り始めて気づいた点を少々。メータクラスター縁の双山波打ちデザイン、何処かで見た事あると思っていたが、アルファロメオやメルツェーデスSL500のそれではないですか。なるほど、TOYOTAフランスデザインスタジオの逸品との事だが、ヨーロッパ競合他社から少しハズした辺りを狙っていると云う事か。国内モデルでは一頃のプレミオ/アリオンやカローラ・アクシオ、オーリスに同意匠デザインが見て取れる。

METER CLUSTERS

 更に付け加えればこの双山波打ちデザイン、ブリティッシュ、MG TD のインテリアデザインが影を落としているかも知れない。

MG TD 1951 INTERIOR

 先輩諸氏の評では重いハンドリングとの事であったが、これまでのDOMANIもどっこいかなり重く、慣れているので違和感なし。むしろ太いステアリングホイールと云い、VITZ顔ながらTOYOTA車らしからぬ造り込みに主戦場はヨーロッパなのだと納得。ガソリンスタンドでフュエールリッドを開けるにも、オール電化よろしくボタンワンプッシュには驚いた。NAVIはDVDであるもののDVDの4.7GB容量は、これまで使用して来て取り回しが良いと感じていたポータブルナビ2GBの経験からすれば不足無し。VICS付で、高速事故渋滞に出会った時情報が刻々変化して感心。また、性分的にNAVI不使用時にディスプレイを隠しておきたい心もちで、ポップアップ式ディスプレイもまた良し。更に驚いたのはオーディオシステムの音の良さ。車でこれ程の音楽が楽しめるとは予想していなかった。なにやらAVENSISプロジェクト主査が謡曲を嗜み、オーディオマニアだったことに起因しているらしい。CDがmp3ファイルを受け付けるのだ。早速Amazonからダウンロードした99曲クラシック集や99曲バイオリン曲集を複数枚のCD化して楽しんでいる。CD1枚で5〜6時間ノンストップ演奏なのである。唯一、ハイオク仕様が残念だが、燃費との総経費バランスでこれまでのDOMANIとどっこい互角である。

 その後我が地方も雪景色となり、最近は行政による除雪が行き届いているとはいえ圧雪路面やアイスバーンの日々が訪れたある日、インパネに見慣れないスイッチがある事に気付いた。取説によると雪道スイッチの様である。押してみて納得。車の性格がトルクフル狼から子羊に大変身。アクセルを踏めども加速は実に緩慢、正に雪道向きの走りである。それまでやけにアクセルが軽いと感じていた。アクセルペダルの先のキャブレター(死語か。今時は電子噴射か。AVENSISはTOYOTAには珍しく直噴。)をパタパタ踏み込む負荷が全く感じられなかったが、CPUのマッピングを変えて性格付けをすっかり別物にしてしまう、完全フライバイワイヤの造りだったと納得(個人的には二代目プリウスも操作系全体がカチャカチャフライバイワイヤと感じられる)。更に雪道故VSC(Vhicle Stability Control、車両安定装置)も良く作動する。特に、アイスバーンのチョットした登りでの発進時、これまでの2WDセダン所有車ではタイヤが空転する事が多かったが、現用車の場合、空転させないぞとばかりにVSCが関与してアクセルを踏み込み走り出しているにもかかわらず、空転側タイヤをガガガとABSブレーキングする感触。結果、空転する事もなく子羊緩慢加速で発進する次第。これまで難儀していた場所を安心して走り抜ける事が出来ている。個人的には4WDは低ギアード設定故に好みではなくセダンは2WDとして来ていたが、VSCと雪道スイッチ子羊変身車たる現用車には大満足。これが終の車か。


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